外国人留学生の就職が進まない理由とは
近年、海外事業や訪日外国人観光客向け事業、また組織のダイバーシティの一環として日本企業に就職する外国人留学生が増えています。法務省の発表では、日本の大学・大学院、専門学校、日本語学校を卒業した留学生の日本国内での就職数は2014年度の調査で14,170人となっており、10年前の5,264人に比べて約2.7倍となっています。
しかし、就職数は増えているものの、卒業予定の60~70%が日本での就職を希望していると言われている中、実際に就職できている留学生は20~30%に留まっているのが現状で、多くの留学生が希望かなわず帰国しています。
今回のブログでは、企業側、留学生側の双方の事情を通じて、「外国人留学生の就職が進まない理由」について書いていきたいと思います。
企業側の課題
企業側の課題については、主に以下の2点が挙げられます。
①外国人社員の必要性が低い
②外国人社員の採用意欲が高い会社でも採用人数は限られている
①外国人社員の必要性が低い
数年前からマスメディアにおいて「グローバル化の波が日本企業に押し寄せ、日本だけでなく世界で活躍できるグローバル人材が必要だ」という声が高まり、外国人留学生への注目が上がりました。当社のような外国人採用支援会社も数多く生まれ、日本企業における外国人採用熱が高まっているかのように見えますが、実際は「まだまだ」という状況です。
人口減少により国内市場は縮小傾向にありますが、1億3000万人の人口を抱える日本では事業が国内で完結する企業が多く、海外展開や組織のダイバーシティの必要性を感じない企業の方が圧倒的に多い状況です。また海外展開を積極的に進める企業においても、外国人を積極的に採用している企業はごく一部に限られ、多くの企業では外国人社員の必要性を感じていないのが実情です。
仮に通訳・翻訳や接客等で外国人が必要になったとしてもアルバイトで対応しているケースが多く、外国人社員に対して「自己主張が強い」「すぐに辞める」といったネガティブなイメージを持っている場合も多いため、必要性があっても採用には至らないことも多いようです。
②外国人社員の採用意欲が高い会社でも採用人数は限られている
この傾向は特に中堅・中小企業で多いのですが、外国人社員を採用する場合、その採用目的が「海外事業担当」「外国人観光客担当」といったように限定されているケースが多く、また一人で数ヶ国語を話せる外国人も多いため、社内に外国人社員が数名いれば十分となり、全体の採用数がなかなか伸びません。
留学生を含む新卒学生を毎年数十名採用している大企業においても、国籍バランスをある程度保ちたいという考えから、社内に既に多くいる中国人社員について新たな採用は控えるというケースも多くみられ、外国人留学生の多くを占める中国人留学生の就職が厳しくなってきています。
外国人留学生側の課題
外国人留学生側の課題については、主に以下の2点が挙げられます。
①日本で就職する本気度不足
②日本独特の就職活動への理解不足
①日本で就職する本気度不足
外国人留学生の場合、日本人学生と違って「母国に帰る」という選択肢があるため、時間的・金銭的に負担の大きい日本の就活になかなか本気に取り組めません。日本に限らず、外国人が自国以外で就職するには相当の動機と覚悟がないと実現は難しく、これがない留学生は書類選考や数回の面接で挫折し、簡単に日本での就職をあきらめるケースも多く見られます。
②日本独特の就職活動への理解不足
卒業の1年前から始まり、数ヶ月に渡っておこなわれる日本の就職活動の波に乗り遅れ、日本で就職できない留学生も多く見られます。海外では卒業の2,3ヶ月前、もしくは卒業後に就職活動をおこなうことが通常なので、卒業の1年前(準備期間も含めると1年半前)から就職活動を開始し、大学の授業や研究よりも優先して就職活動をおこなうことに理解ができない(というか抵抗感がある)という状況なのです。
また、「プレエントリー」「企業説明会・セミナー参加」「エントリーシート提出」「筆記試験」「面接」などの各ステップを、日本語での指示の下、決められた順番・スケジュール通りに進めなければ就職できない日本独特の就職活動スタイルも、外国人留学生が戸惑う原因となっています。
企業・留学生双方の課題である日本語能力
企業、外国人留学生に共通する課題としては、「日本語能力」が挙げられます。日本企業が外国人社員を採用する際に最も重視するのは「日本語能力」であり、外国人留学生が日本で就職活動する際に最も苦労するのも「日本語能力」です。
グローバル化が進み、日本企業の中にも英語を社内公用語にする企業も出てきてはいますが、ほとんどの企業では社内や取引先とのコミュニケーションは日本語でおこなわれているため、高度な日本語能力が求められます。履歴書・エントリーシートや面接などの採用選考は日本語のみでおこなわれ、日本語を流暢に扱う能力はもちろん、日本語で自分自身について説明・PRする能力も問われます。
さらに、日本語能力だけでなく、その場に応じたコミュニケーション・立ち振る舞いができる能力、つまり「空気を読む力」も求められるため、とりわけ非漢字圏出身の留学生や留学期間が浅い留学生にとって「日本企業への就職」は非常に難易度が高くなっています。
一方、グローバル化を目指す国公立大学や上位私立大学では、世界中から優秀な外国人留学生を集めることを目的に英語のみで学位が取れるコースや研究室が増やしているため、「日本語能力」という面から見ると、大学で増えている留学生と企業が求めている留学生には乖離が見られます。
課題解決に向けて
企業側、留学生側双方に課題はありますが、少子高齢化で労働人口が減っている中、外国人の力を借りなければ労働力を保つことはできません。日本政府としても外国人留学生の就職支援を後押ししており、先日発表された「日本再興戦略改訂2016」においても留学生の日本国内での就職率(就職者数/就職希望者数)を現在の30%から50%へ向上させることを謳っています。
この数字を実現するためには、企業側、留学生側双方が歩み寄っていくしかないでしょう。企業側は外国人が活躍できる環境を整え、留学生側は企業で活躍できるための能力を身に付ける、お互いがお互いの求める形に近づいていくことで、日本国内における外国人留学生の就職は進み、日本の活力も上がっていくと思います。
——————————————————————————————————————————
当社では、外国人留学生を採用したい企業、そして日本で就職したい外国人留学生の支援をおこなっていくことで、双方の溝を埋め、円滑に採用・就職できる環境を作っていきたいと考えています。
外国人留学生を採用を検討している企業向けには外国人の採用支援サービス、日本で就職したい外国人留学生向けには外国人留学生向け就職活動支援サービスを大学等の教育機関にご提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
■ 企業向け:外国人の採用支援サービス
■ 大学等教育機関向け:外国人留学生向け就職活動支援サービス
■ ユニ・ダイバースへのお問い合わせ
【関連コンテンツ】
法務省「平成26年における留学生の日本企業等への就職状況について」
日本再興戦略改訂2016